現在地慢性膵炎は、痛み・膵管・栄養・糖尿病を分けて考えます

CHRONIC PANCREATITIS

慢性膵炎は、痛み・膵管・栄養・糖尿病を分けて考えます

慢性膵炎では、炎症を繰り返すうちに膵臓が硬くなり、膵液や血糖を調節する働きが低下します。腹痛だけでなく、膵石や膵管狭窄、消化吸収、糖尿病、膵がんを見落とさない視点が必要です。

まず押さえたいこと

  • 痛みだけでなく、栄養・体重・血糖も治療の対象です。

  • 膵石や膵管の狭さは、症状と膵液の流れを見て判断します。

  • 膵管ステントは、交換・抜去までの予定を確認しましょう。

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やさしい医療用語集を開く ↗
慢性膵炎用語集へ ›
炎症が長く続き、膵臓の形や働きが徐々に変化する病気です。
急性増悪用語集へ ›
慢性膵炎の経過中に、急性膵炎のような強い炎症が重なる状態です。
膵石用語集へ ›
主に膵液の通り道である膵管内にできる石です。
膵管ステント用語集へ ›
狭くなった膵管を越えて置き、膵液を流れやすくする細い管です。
膵外分泌機能不全用語集へ ›
食べ物を消化する膵液が不足し、体重減少や脂肪便、栄養不足につながる状態です。

最初に押さえたい四つのこと

01

痛みだけの病気ではない

痛みが落ち着いても、消化吸収、体重、骨、糖尿病など、膵臓の働きの低下を確認します。

02

画像所見だけで処置を決めない

膵石や膵管狭窄があっても、症状、膵液の流れ、膵臓の状態を合わせて治療の利益を考えます。

03

内視鏡と手術を競わせない

負担の少ない内視鏡治療が適する場合と、手術の方が長く効果を得やすい場合があります。

04

膵がんとの区別を続ける

慢性膵炎は膵がんのリスクと関連しますが、すべての方に同じ検査を同じ間隔で行うとは限りません。

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症状と病期で、見るものが変わります

炎症・疼痛期痛みと再燃を抑える

飲酒・喫煙、食事、原因を見直し、薬で痛みを整えます。膵液の流れが妨げられていれば処置を検討します。

移行期痛みと機能低下の両方を見る

膵石・狭窄、体重、便の変化、血糖を一緒に確認します。

機能低下期栄養と糖尿病を支える

膵消化酵素薬、十分な栄養、ビタミン・骨の評価、低血糖にも配慮した血糖管理が中心になります。

病期は明確に一線で分かれるものではありません。痛みが少ないことと、病気が軽いことは同じではないため、症状と膵機能を分けて評価します。

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急な痛みを「いつもの慢性膵炎」で終わらせない

慢性膵炎の方に急な強い腹痛が起きたときは、急性増悪だけでなく、膵石や膵管狭窄による閉塞、仮性のう胞、胆石・胆管炎、消化管の病気、膵がんなども考えます。症状だけで決めず、血液検査と画像を組み合わせます。

早めに相談する症状

強い上腹部痛や背部痛、繰り返す嘔吐、発熱、白目や皮膚の黄ばみ、意識や呼吸の変化がある場合は、ウェブで様子を見続けず医療機関へ相談してください。

急ぐ症状と受診の目安を確認する ↗
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膵石・膵管狭窄は「流れ」と「症状」で判断します

膵石や主膵管の狭窄が膵液の流れを妨げ、痛みや膵炎を繰り返す場合は治療を検討します。一方、無症状の画像所見に一律で処置を行うわけではありません。石の大きさ・硬さ・位置・数、狭窄の長さ、膵管の形、がんの可能性を評価します。

1

画像で設計する

CT、MRI・MRCP、超音波内視鏡などで、石・狭窄・膵管拡張と腫瘤の有無を確認します。

2

ESWLで石を砕く

体外から衝撃波を当てる治療です。主に膵頭部・体部の大きく硬い主膵管結石で検討します。

3

ERCPで流れを作る

内視鏡から膵管へ器具を入れ、小さな石の除去、狭窄の拡張、ステント留置などを行います。

4

手術も早めに比較する

内視鏡治療を繰り返しても改善しない場合や複雑な石・狭窄では、外科治療を含めて再検討します。

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膵管ステントは、入れて終わりではありません

膵管ステントは、狭窄を越えて膵液を流し、痛みや再燃を減らす目的で留置します。多くは一定期間の治療で、交換・抜去の計画と画像による再評価が必要です。

  • 目的:狭窄の治療、膵液の流れの改善、膵管損傷や膵性胸水・腹水への対応など、病態ごとに異なります。
  • 限界:狭窄が残る、痛みが改善しない、何度も交換が必要になる場合があります。
  • 注意:詰まり、移動、感染、ERCP後膵炎などが起こり得ます。交換・抜去予定を確認してください。
  • 次の選択:効果が不十分なら、同じ処置を続けるだけでなく、外科治療を含む多職種での再評価が重要です。
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栄養・便・体重・血糖も治療対象です

栄養

食べられる量を守る

急性の痛みがある時期を除き、長期に一律の厳しい脂肪制限を続けると栄養不足を招くことがあります。

消化

膵消化酵素を補う

体重減少、脂っぽい便、下痢、栄養不足があれば、高力価の膵消化酵素薬を食事とともに用いることを検討します。

全身

ビタミンと骨を確認する

脂溶性ビタミンの不足、筋肉量の低下、骨粗しょう症も評価します。

血糖

低血糖にも注意する

膵性糖尿病ではインスリン分泌だけでなく、低血糖を防ぐ仕組みも弱ることがあり、個別の管理が必要です。

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慢性膵炎と膵がんリスク

慢性膵炎は膵がんのリスク上昇と関連します。ただし、原因、発症年齢、経過年数、遺伝子、飲酒・喫煙などでリスクは異なり、一般的な慢性膵炎のすべての方に対する検査方法と間隔は確立していません。

「定期検査をしているから安心」と「リスクがあるから必ずがんになる」の、どちらでもありません

新しい局所的な膵管狭窄や腫瘤、黄疸、説明できない体重減少、痛みの変化、糖尿病の新規発症・急な悪化があれば、慢性膵炎の変化だけと決めずに詳しく調べます。腫瘍マーカーだけで早期がんを除外することはできません。

遺伝性膵炎の一部、特に生まれつきのPRSS1遺伝子変化がある方については、国際合意で専門施設における膵がんサーベイランスが推奨されています。それ以外は、家族歴や病因を含めて個別に相談します。

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自己免疫性膵炎は、通常の慢性膵炎と分けて考えます

自己免疫性膵炎は、免疫の異常が関係して膵臓が腫れたり、膵管が細くなったりする病気です。日本で多い1型はIgG4関連疾患の一部で、胆管、唾液腺、腎臓などにも変化が出ることがあります。

鑑別

最優先は膵がんとの区別

黄疸や膵臓の部分的な腫れは膵がんと似るため、血清IgG4だけで決めません。

診断

複数の所見を組み合わせる

画像、血液、他臓器病変、必要時の組織を評価します。ステロイド反応だけで診断しません。

治療

ステロイドが中心

症状や臓器障害がある場合に治療し、改善後も再燃の有無を見守ります。

注意

自己判断で治療を始めない

膵がんを十分に除外しないままステロイドを試すと、診断が遅れるおそれがあります。

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診察室で確認したい七つの質問

  1. 私の慢性膵炎の原因と病期は何ですか?アルコール、喫煙、遺伝、自己免疫、膵管の形などを確認します。
  2. 今回の痛みは急性増悪ですか?石や狭窄、胆道疾患、膵がんなど、他の原因の評価も聞きます。
  3. 膵石・狭窄は症状の原因になっていますか?画像にあることと、治療が必要なことを分けます。
  4. ESWL、ERCP、手術のどれが適していますか?成功の見込み、処置回数、合併症、長期効果を比較します。
  5. ステントはいつ交換・抜去しますか?予定日と、詰まりや感染を疑う症状を確認します。
  6. 膵消化酵素薬や栄養評価は必要ですか?便、体重、血液、骨、筋肉量を含めて確認します。
  7. 膵がんをどのように見分け、見守りますか?自分の原因・家族歴・画像に合った方針を相談します。
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根拠資料・医学情報の確認内容を開く

国内外の診療ガイドラインと査読論文を用い、確立していることと、施設や患者さんの状態で判断が分かれることを区別して記載しています。

医学情報確認日
2026年8月26日
今回の確認内容
急性増悪、膵石・膵管狭窄、膵管ステント、膵がんリスク、自己免疫性膵炎を再確認しました。
内容・表示更新
2026年9月9日:アルコールと膵臓・断酒支援の解説への案内を追加しました。
確認体制
執筆者本人が医学情報を確認しています。外部確認を実施した場合のみ、確認者の専門領域と確認日を表示します。
情報源の選び方・更新方法・利益相反の方針を見る ↗
  1. 日本消化器病学会 慢性膵炎診療ガイドライン2021 ↗診断、病期、断酒・禁煙、疼痛、内視鏡・外科治療、栄養、糖尿病、合併症、予後を扱う国内指針。
  2. 日本膵臓学会 診断基準・ガイドライン ↗慢性膵炎臨床診断基準2019、膵石症の内視鏡治療、自己免疫性膵炎診療ガイドライン2020への入口。
  3. 日本消化器内視鏡学会:膵石の内視鏡治療Q&A ↗治療対象となる膵石、ESWL・内視鏡治療・手術の考え方を患者さん向けに説明。
  4. ESGE guideline: endoscopic treatment of chronic pancreatitis ↗有痛性の膵管閉塞に対するESWL・内視鏡治療、膵管狭窄へのステント、再評価と外科相談を扱う指針。
  5. International consensus guideline: pancreatic cancer surveillance in chronic pancreatitis ↗慢性膵炎の膵がんリスクと、遺伝性膵炎を中心とするサーベイランスの国際合意。
  6. 自己免疫性膵炎診療ガイドライン2020 ↗自己免疫性膵炎の概念、診断、膵外病変、膵がんとの鑑別、治療を扱う国内指針。

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執筆者と情報の確認

執筆・医学情報確認丹野 誠志

消化器内科医・医学博士/イムス札幌消化器中央総合病院 院長

医学情報確認日:2026年8月26日

内容・表示更新:2026年9月9日(医学情報確認日とは区別しています)